こちらは、幕末・日本史サークル「竜ハ、飛ンデイル。」と近土サークル「LOVE&LOVE」のオフライン告知ページです。
 
 
 発行物&イヴェント予定など、随時お知らせしてゆく予定です。

   
 
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新刊&再版のご案内

竜ハ、飛ンデイル。
発行

【再版】
 
 神鳴 Thunder is an outcome of will of God.

    A5版 72頁 コピー
    ¥700
    「神鳴」(近藤&土方) 
《 残部少 8月17日現在 6冊 》

 2003年に土方の誕生日の5月5日から命日の5月11日までを(勝手に)「HIJIKATA WEEK」と名付けて毎日更新しておりました池田屋事件前後のあたりのお話を改稿したものです。以前コピー誌で少数作ったものを再版しました。
 土方視点ですが、でも主人公は近藤さんかも?(笑)。
 文章自体はかなりブラッシュアップしております(おお、言い切った!)。いろいろな意味で愛と力を注ぎまくっている1本。

 〈sample〉

 とるに足らない男だ。
 主上を奪取するなどという、そら恐ろしい計画をたてている連中の一味なのだ。ここで責め殺したところで、まさか非難はされないだろう──
 そう、決めつけたかった。
 しかし、古高のその半分つぶれかけた目は憎悪にたぎって異様なまでに炯り、なんの手出しもできないくせに歳三を威嚇しようとしていた。
 本音を言えば歳三は恐ろしかった。
 古高のことではない。古高を口を閉じたまま死ぬ気にさせている連中の意志が、である。また、荒唐無稽な計画を命がけで実行に移そうという、その無謀でかたくなな狂気が、であった。
 おれたちは、とんでもない連中を相手にしているのかもしれない……。
 ぞくりと足元を冷たい手でなであげられたような気がした。

LOVE&LOVE 発行
【新刊】  
  AGAIN
   A5版 32頁 コピー
   ¥300 
※8月31日までのお申し込みとさせていただきます。
   「かりそめの夜ではなく ―It is not a temporary lover at that night.―」(近藤×土方)

 ようやく想いを遂げあい、気持ちが通じあったはずなのに、なぜかよそよそしい態度をとる土方に、「おまえの気持ちはどうなんだよ、もうオレおまえのことがワケわかんねえ!」と腑に落ちない近藤さん……という1本です;
 ごめんなさい、あとがきもなんにもつけていないのでなんですが、サイトの「天狼 sirius」、それから今回再版した同人誌の「明け染めし」のあと(あ、つまり「初めて物語(笑)」のあと)、という設定です;
 書いていて途中で気づいたのですが、たぶん、これあと3倍くらいのヴォリュームの話のはずなので、機会がありましたらこの後を書いてみたいと思います(中途半端でゴメンナサイ)。ちょっといろいろな意味で微妙なお話なのですが、よろしければぜひ。

 〈sample〉

 勇は、ふいに口をつぐむと、しばらく空をみつめていた。空気が澄んでいるせいか、凛と冴えた美しい青空だった。
「だから歳、いまさらだ」
 視線を歳三にうつすと、勇はふたたびくりかえした。
「いまさら、おめえがおれのことを嫌いになろうが憎もうが関係ねえ。おめえの頭のなかで、おれを友という枠に押しこめていたってどうでもいい。おれは、この痛みと苦しみにつきあいながら、これからもおめえにずっと惚れつづけてるに決まってる」
「勇さん――」
 だが、と勇はおおきく息を吸った。
「おめえがこれまでのようにおれを友としてしか見たくねえというのなら、……きっぱりと、と言えねえのがわれながら情けねえが、おれはそれを受け容れよう」

【再版】

  Beautiful,Beautiful Days
    A5版 52頁 コピー
    ¥500  
※8月31日までのお申し込みとさせていただきます。

   「雨が、あがれば」(近藤×土方)
   「明け染めし」(近藤×土方)


 以前作った「Beautiful Days」という、雨の日と晴れの日をテーマにして近藤さんと土方の視点で書いた同人誌2冊を1冊にまとめたものです(しかし、なんという安易な誌名だ;)。出した当時のものとは、語句や句読点程度の加筆修正をしております。
 「雨が、あがれば」は近藤さん視点で、試衛館時代のもの。「勇」と改名したばっかりの近藤さんを、「勝っちゃん」「勝っちゃん」と土方が呼んでます(笑)。ほのぼのしてて、こういうの好きだな〜と思いながら書きました。
 「明け染めし」は土方視点で、「天狼 sirius」から一夜明けて、という設定です。
 たいした描写をしていないのですが、ちょっとセクシィな雰囲気をかもしだしつつ、やたらうれしそう&はずかしそう(?)な仲のいいおふたりさんを書いてみました。エロというよりは大人向け、という感じでしょうか。ふたりが幸せそうだったので、書いていてもそりゃあ楽しかったおぼえがあります(笑)。
 
 〈sample〉

 「歳は、どうしてこんなところをうろついてるんだよ」
 勇の非難するような言いかたに苦笑しながら、歳三は猪口をもてあそんでいた。
「……ちょっと小金が貯まったんで、為兄に三味線の撥でも買って帰ろうかと思ってたんだけどよ、」
 くすっとちいさく笑った歳三は、手にした酒をあおった。
 勇は視線を外す機会を失ったまま、歳三が白い喉を反らすのを見つめていた。
 これはなんの罰なのか、それともおのれを試されているのか。
 喉仏が上下する男の喉を、どうしてこんなになまめかしいと感じてしまうのだろう。
 自分の心のなかのいちばんやっかいな部分を、じりじりと際限なくあぶ炙られているような気持ちだった。(「雨が、あがれば」より)


                             ◆◇◆
 
 ぎゅっ、と胸のあたりから音がしたように感じた。
 間髪を入れずに熱く絡んできた勇の舌からは、むせるような男の味がした。ざらっとした髭が歳三のあごをこすってゆき、いまさらながらに歳三の腰をぞくぞくとわななかせる。心だけではない、欲望をともなう身体もふくめて、このひととの恋は甘いだけではないのだと暗示されているような気がした。(「明け染めし」より)



 
既 刊 ご 案 内

 

 
竜ハ、飛ンデイル。 発行

 
 
■ SHIEIKAN ALL-STARS
   A5版 36頁 コピー
   ¥300  
《 残部 8月17日現在 13冊 
   「来てくれて、ありがとう」(江戸試衛館のみなさん)

  じつはBlogの2007年1月27日のエントリーで「 あまり我が家ではご出演の機会がないのですが、わたしの書く試衛館のみなさまがたは、実はもれなく子ども好きで、しかも子どもにはけっこう好かれる人たちであります。」と書いてから、ずっと書く機会を狙っていた子どもネタでした。発行が5月3日でこどもの日が近かったせいもあって、ぜひこの話を、と思って書きました。ドタバタしてますが、楽しく書きました。
  以下、本文からほんのすこーし抜粋。
  
〈sample〉

「……あれ? 源さん」
 おれは源さんの袖口を引っぱった。
「子どもが泣いているのが聞こえませんか?」
「ん? そうか?」
 源さんは動きを止め、
「うーん、おれにはいまひとつわかんねえがなあ。猫の仔の泣き声も人間の赤ん坊の泣き声にそっくりだからよ。近所の猫でも仔猫を産んだんじゃねえのか……って言っても、まだ仔猫の生まれる時期じゃあねえか」
「そうか、年寄りの源さんに聞いたのがまちがいだったな。……あ痛ッ」
 鉄拳が飛んできた。
 「年寄り」と呼んだが、源さんは勇先生より五つ年上なだけだ。
 ほんとうの話をしてしまえば、もうおれも試衛館に来たばかりの九つの子どもではなかったし、源さんの拳なんて軽くかわせる。けれども、おれは十八になったいまでも、九つのころからことあるごとに父親のように口うるさく叱ってくれた源さんには、なにかあればこうやって、あのころと変わらずにゴツンと頭にその無骨な拳骨を振るってほしいのだった。
「えー、ほんとうに聞こえませんか?」
 頭をさすりながら再度訴えたおれに、源さんはじっと耳をそばだてるような仕草をした。
 どこからか、子どもの泣き声が風に乗ってやってくる。
「……たしかに、泣き声だよなあ、……惣次郎」
 疑ってわるかった、とでもいうような声で源さんは言った。
「でも惣次郎――あの泣き声、だんだんこっちへ近づいてきてやしねえか?」
「え?」
 おもわずおれたちが顔を見合わせているあいだにも、子どもの泣き声が大きくなってくる。
 いったいなんなんだ、と思っていると、
「おーい、近藤さん。いやだれでもいい、だれか助けてくれえ……」
 庭先から、世にも情けない声が聞こえてきた。歳さんの声だった。





 
  PRIDE  《 残部少 8月17日現在 9冊 》
    A5版 92頁 オフセット 新選組小説再録集
    ¥500
    「嵐、布く」(土方)
    「斬 ZAN」(沖田)
    「驟雨」(藤堂)
    「魂 PRIDE」(土方)
    「箱館、夕闇の風」(土方)
      ※イラストは藤城海さまに描いていただいてます。
 92年から97年までの新選組小説の再録本です(古っ!)。 「嵐、布く」と「斬 ZAN」の2編はすこし書き直しています。のこりは時間がなかった(^^; ちょっと恥ずかしい1冊です……。

    以下、本文からすこし抜粋。

 〈sample〉 

 あれが壬生狼だよ
 ――こう、声をひそめてささやく声がこの男に聞こえないわけがなかった。
 いくぶん背をまるめ、もうすっかり暖かいのに、ふところに手を入れ、四条の道を足早に歩く男は、しかしもう半刻も悩んでいた。決まらないのだ。
 季語が、である。
古びていくぶん色も褪せた単衣をまとい、なにやらむつかしい顔で大通りを闊歩する姿は、なるほど狼に見えぬこともない。
 しかし、かれが物騒な形相で苦悩しているのが詩吟のためだと思いあたる人間は、おそらくひとりもいないにちがいなかった。
 この、意外なほどに風流な男は、朝もはやくから清水寺におもむき、たちのぼる春霞と朝日に光る青葉の波を目にした瞬間に詩人となった。
 ただ、かなしいかな、詩作に関しては手すさび程度の才能しかもちあわせていないかれは、どうしてもうまく自分の感動を言葉に表すことができずに苦しんでいた。むろん、かれ自身おのれの乏しい詩才は承知しているのだが、なにかことあるごとに詩人の魂がうずいてかれを悩ますのだ。 (「嵐、布く」より)

                          ◆◇◆

 尾行られている、と思ったのは、どうやらまちがいではなかったらしい。
 沖田総司はわずかに、歩をゆるめた。
 べつにこのままやりすごし、気づかなかったふりをしてもよかったのだが、自分の腕が落ちているのかもしれない、という不安は、あの池田屋の以後、つねにかれにつきまとっていた。
 この京都で、そして新選組の一番隊隊長として、剣の腕の是非はかれにとってまさに死活問題だ。
 病で命を落とすのならば、これもさだめだと思ってあきらめもつくが、剣で劣ったうえの落命では死んでも死に切れぬ――三日まえまでは起きあがることもままならず、床にふせっていた総司である。 (「斬 ZAN」より)


                          ◆◇◆


 いまにも、泣きだしそうな空だった。
 藤堂平助は、この京洛の細い路地を歩いている。
 祇園にでもあがってひとつ憂さでもはらそうか、と出てきたつもりが、かれのいま歩いているのは四条通りで、祇園はとっくに通りすぎていた。
 なんということはない、ただ逃げ出したかっただけなのだ、とようやく合点がいったのは、かれがひとりきりになってようやく深く大きく息を吸っている自分に気づいたからだった。
最近の藤堂の夜は長い。
 新選組の分派――聞こえはいいが、伊東甲子太郎とともに新選組をでてきた身だ。いつ夜襲にあうかもしれぬという恐怖で、藤堂は熟睡ができなかった。
 そしてそんな藤堂の夜は、新選組の近藤や土方と江戸よりともにすごした年月の分だけ、ほかの分派組の男たちよりも長かった。 (「驟雨」より)

                         ◆◇◆

 土方歳三は、しずかな微笑がくちびるをかたちどってゆくのを自覚しながら、今朝の冴えた空を窓から見あげた。
 一日一日と身体がなにやらすきとおるような、そんな気分になるのはこの季節のせいも少しはあるのかもしれなかった。
 箱館の春はまだおとずれたばかりだが、格段に心地よかった。それは、長く厳しい冬をしのいだせいかもしれなかったし、本州にくらべて湿度が 低いことや、また、目にとどくかぎりの花が、一斉に咲きはじめるせいかもしれなかった。
 そういえばおれの句は春ばかりだ、と総司のやつがからかいやがったが……。
 あいつはいまどうしているのだろう、と歳三は江戸に残してきた沖田総司のことを思った。
 不憫なことをした。
 と、そう歳三は悔いている。 (「魂 PRIDE」より)

                         ◆◇◆

 箱舘に、風がふく。
 五月の涼風に髪をなぶられ、かれは穹を見あげた。
 見ていると、身体が吸いこまれてしまいそうな戦慄をおぼえるほどの、蒼い穹。
 ふいに胸が痛む。
 それが望郷の念であったことに、かれは気づかぬふりをした。
 視線をうつすと、かなたには本州をしめす緑の稜線がうすくけむっている。
 ──ああ、遠すぎる、あまりにも。あの先、この穹がはてにたしかにあるというのに、あの風のつよいおれが多摩は──。
 かれは熱くにじむ視界をさとった。さとりながらも受けながすように、微笑った。
 おれが名は──……
 かれは、おもう。
 いくら人を斬ったかしれぬのだ。かれにとって人の命などは蜻蛉よりもはかなく、とるに足りぬものだった。かれはときに冷酷に、ときに傲然と人の命を奪ってきた。さりとて、自分がおめおめと生き永らえる身ではないことも、かれこそが知っている。
 京でも勝沼でも、会津、そしてこの箱舘でも──血の雨のふるところかならず、かれとその差料、血を吸ってぬらぬらと炯る和泉守兼定があったのだ──しらず腰に手がのびる──しかし、その愛刀もいまは、ない。京都以来、かぞえきれぬほどの修羅をともにくぐりぬけてきた大業物の妖刀は、遺品のつもりで写真とともに日野の義兄に送った。
 ──思いのこすことはもう、なにもない。
 時代が終わる。おれも終わる。 (「箱館、夕闇の風」より)






 竜ハ飛ンデイル。《 残部少 8月17日現在 10冊 》
   A5版 60頁 オフセット
   ¥400

   「京都の空」(沖田) 兵藤久遠さま
   「斬 ZAN−残心−」(沖田)
   「
名残花」(沖田&山南)藤城半朱さま
   「風を奏でて地を這って」(藤堂&沖田) 四礼彗さま
   「LOVE」(近藤&土方)
   「士道」(相馬主計) 藤原青武さま
   イラスト 響さま

  小説やらマンガやらイラストやらの寄せ鍋状態の1冊。
  「LOVE」というのはヘタクソなわたしのマンガなんですが、やっぱり「LOVE」とくれば近藤さんと土方です(笑)。

 以下、本文からすこし抜粋。

 〈sample〉 

   総司のやつが少しおかしい、と云いだしたのは、その喉を突かれた痣がまだ消えぬ永倉だった。
「ありゃあ憑かれてるぜ」
 と、かれは云った。
 道場の床をいつもなら丸く掃く永倉は、考えごとをしていたのかつい、塵ひとつ落ちていないほどに箒をつかっていた。
 その口調にはいくらかの揶揄と、そしてそう云ったときの表情には恐怖としかいいようのない感情がつかの間よぎった。
「憑きものつきかえ? おだやかじゃねぇなァ。いったいどんなものの怪が、あのぼうやにとっ憑いたってのよ」
 おもしろそうに永倉の肩をたたいたのは原田左之助だ。
 ほんとうならば当番の永倉が雑巾がけまでやるのがふつうだったが、永倉に思慮ぶかい目をして
「佐之ちゃんよ、」
 と呼ばれてしまったものだから、つきあいのいい原田は雑巾を片手に当番の永倉以上に身体を動かしていた。
 このふたりは奇跡とでもよぶべき体験を共有している。
 「奇跡」などというとなにやら大げさであるが、たしかにだれに話しても信じてもらえぬような気がして、ふたりはあの以後、だれに対してもそれについてはひとことも口にしなかった。もちろんおたがい面とむかって話題にすることも、なかった。








 
HORSE DEER 《 完売しました 》
   
 
A5版 20頁 コピー
    ¥200
   「山佐木スゝムの観察日記」
   「土方歳三の人生相談 士道不覚悟」


  以前サイトでやっていた馬鹿コンテンツです。わざわざ小冊子にせんでも……(^^;

   以下、本文からすこし抜粋。

 
〈sample〉

 「山佐木スゝムの観察日記」

4月1日
 今日からおれも社会人である。 
 といっても、じつはなんだか心細い。就職試験で本命だったテレビ局も、第2志望だった新聞社も、第3志望だった出版社も……(以下略)落っこちて、ほとんどヤケになっていたところに駅前でチラシをもらったのだ。

 〈雑伎団・神仙組、組員募集 あなたも日本中を恐怖に幸せをふりまいてみませんか?〉
 
雑伎団というのもアレだが、なんというか、妙に心に引っかかって850円の時給に惹かれてついつい電話をしてしまったのだ。
 よほど困っていたのか、面接らしい面接もなしに、おれは即採用となり、この4月から晴れて「神仙組」の組員だ(この「組員」という名称、どーにかならんのか……)。
 見習いではあるが雑伎団「神仙組」の組員となったおれは、今朝出勤してみると「観察」という部署に配属された。主にどういう仕事をするセクションなのかまだよくわからないが、とにかく「観察なんだから『観察日記』をつけるんだよ」と観察の先輩でもある志摩田さんに軽く言われてしまった。
 じゃあ志摩田先輩はなんの観察日記をつけているんですか、と訊いたところ「朝顔だ。なんか文句あるか」と凄まれてしまった。志摩田さんは身体はデカイし、声もデカイので、なんとなくそれ以上追求するのもはばかられてしまったが、──4月の段階じゃあきっと朝顔の種も撒いてはいないだろうから、きっとおれは志摩田さんにうまく丸めこまれてしまったにちがいない。
 よくはわからないが、とにかくぶ厚いノートを渡されてしまったので、これに観察日記を書くしかない。
 しかし、大丈夫かなあ、おれ……。

                         ◆◇◆
 「土方歳三の人生相談 士道不覚悟」

相談者
 前略。初めてお便りします。
 元気で明るいぼくですが、労咳にかかってしまい、単に明るいだけになってしまいました。なんの未練もないぼくですが、一度黒猫を斬ってみたい、というのが長年の夢です。どうか、黒猫の斬り方を御指南よろしくおねがいします。 
千駄ヶ谷/黒猫のタンゴ

土方先生の回答
 ──猫という小動物は動きが敏捷で身も軽い。これを斬るとなるとよほどの使い手でなければならないだろう。わたしの知るうちでもっともすぐれた剣の使い手である沖田という男でさえも、やり遂げるのは至難の業と思える。
 わたしが勧めるのは「猫は寒くなると炬燵で丸くなる」という習性を逆手にとり、いまあなたが斬らんと欲する猫のそばに炬燵を置いて罠を仕掛け、丸くなったところを一気に斬る、という方法である。
 猫という小動物の生態を長年研究し、実験を重ねたわたしのゆきついた、科学的、しかも合理的でもっとも確実な方法である。存分にやり給え。

  

    

  


 
■ 
闘 WAR    
《 完売しました 》
    
A5版 28頁 コピー
    ¥200
    「蒼雲」(近藤&土方)
    「持ち越された喧嘩」(斎藤&川路)/秋山香乃さま
   
    はからずも、「出会い」を書いた掌編2本。

    以下、本文からすこし抜粋。

 〈sample〉 
   
「うまく云えねえが、おれにはそのとき、なにか形のようなものが見えたような気がした。もちろん目に見えているわけではねえ、頭ンなかに浮かんだだけなんだが、おれの剣道は、めざすものは、そのときに浮かんだ形のようなものじゃねえかと思ってる。素振りだけは毎日やってるんだが、師匠についたほうがいいかどうか、おれにはよくわからねえんだ」
 おそろしく大事な話をしている。しかも今日はじめてあった少年に。
 こんな話はだれにも、彦五郎にもしていない。
「そうか。歳さんがそう思っているのなら、そうしたほうがきっといい」
 勝五郎はあっさりとそう云った。
 歳三自身、勝五郎がもっと強引にすすめてくるものだと思っていた。肩すかしを食らったような心地がして、歳三はいぶかしげに勝五郎を見た。
「道場剣道は、それが性に合うものとそうでないものがいる、と師匠がおっしゃったことがあった。歳さんは道場剣道が合わないほうなのかもしれないな」
 この男はただものではない。
 勝五郎の男らしい声を聞きながら、歳三は思った。周助が是非に、と望んだのもわかるような気がした。ほんの短い間に歳三は、自分すらも知らなかった願望を勝五郎にさらけだし、その孤独な野心に誇りさえおぼえた。しかも、話してしまったことで勝五郎との間に秘密を共有した親密さが生まれたのを知った。 (「蒼雲」より)












   




   竜ハ、飛ンデイル。   LOVE&LOVE
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